次に、このGDPを世界各国と比較してみます。各国のGDP(名目)を図表1-3に示します。この図表では、2015年、2020年、2025年の値を示しています。2015年は実績値、2020年は実績値と一部の国では推計値、2025年は全て推計値です。また、各国のGDPの換算は為替レートを用いています。グラフは2025年の値の順に表示しています。

よく知られているように、GDPの世界No.1は米国、そして、No.2は中国です。この両国のGDPは3位の日本の約3倍以上(2020年の値)という桁違いに大きなものです。それに続く日本のGDPは世界3位と言われますが、その実態は3位グループの先頭に位置しているというのが適切な表現ではないでしょうか。とは言え、日本の経済規模の世界第3位は、間違いのない事実です。

図表13 GDP(名目)の世界各国比較

IMFのデータベース https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2023/April より作成

ここで考えたいのは、GDPの成長具合(成長率)です。図表14G7諸国にアジアの国々(インド、中国、マレーシア、シンガポール、台湾、韓国の6か国を加えた13ヵ国のGDP(名目)の成長率を表しています。2011年を基準として2022年までの10年間の推移です。

図表1-4 G7+アジア諸国)のGDP(名目)の伸び

 

2011年を基準とした推移)

IMFのデータベース https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2023/April より作成

図表14を見ると、インド、中国の成長率が著しく高いことが判ります。かつて、2000年代以降に経済発展をした国を表す言葉としてBRICsの語が使われました。このインドと中国は、そのBRICsの一角です。この2つの国は、広大な国土、潤沢な天然資源、そして多くの人口によって成長を遂げてきました。2010年代に入っても、その成長が続いています。この10年間にGDP2.5倍超になっています。驚異的な成長と言えます。

続いて、図表1-4の下位グループを見ます。これを見ると、日本は成長率ではイタリアと並んで最下位となっています。10年間で10%程度しか伸びていないのです。G7を構成する米国、英国、カナダ、ドイツは50%前後の成長があります。これから比べると、日本とイタリアはGDPの成長率でみると「G7の病人」と言える状態なのです。

一方、日本の近隣の国である韓国と台湾に注目しますと、この10年間で両国とも、50%超の成長を見せています。この両国と比べても、日本の成長が著しく低いことが確認できます。日本のGDP総額は世界第3位です。しかしながら、その成長率はGDP上位国の中では、最低レベルなのです。多くの国々はさまざまな事情を抱えながらもGDPは成長しています。それに比べて、日本は成長していないのです。 

これによって、日本は世界の経済成長から取り残されていることが確認できました。これが私たちの日常の暮らしにも大きな影響を及ぼしています。どうしてこのような状況になったのでしょうか。社会全体で考えるべき課題だと思えます。

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