次に、人口を世界の各国との比較で見ます。図表112はGDP上位の12ヵ国の人口を表しています。2020年の人口では、中国が14.3億人、インドが13.6億人と、この2か国がダントツのトップです。それに、3.3億人の米国が続きます。そして、日本は6位という位置づけです。人口で見ると、日本は上位国です。この世界でもトップクラスの人口が、これまでの経済発展を支えていたと読み解くこともできます。

図表1-12 GPD上位の12ヵ国の人口

国連のデータベース  https://population.un.org/wpp/DataQuery/  より作成

 GDPに関係なく人口だけで見ると、中国、インド、米国、インドネシア、パキスタン、ブラジル、ナイジェリア、バングラディッシュ、ロシア、メキシコ、日本、エチオピア、フィリピン、エジプト、ベトナムという順になります。ここでは、日本は11位となります。いずれにしても、日本はそれなりの規模の人口がある国と言えます。

先ほど、日本の年齢3区分の人口動態を見てきました。この視点で、人口の多い中国、インド、米国の状況を見ましょう。図表113のグラフは、中国の年齢3区分の人口動態です。実は、中国においても生産人口の減少が始まっているのです。日本の生産人口の減少は1995年に始まりましたが、中国では2015年頃に始まっています。まだその減少は僅かですが、日本とは1520年の時差で日本と同様の問題が顕著になると言われています。

図表1-13 中国の人口動態(年齢3区分)

国連のデータベース  https://population.un.org/wpp/DataQuery/  より作成

一方、米国とインドは、日本や中国とは状況が異なります。両国とも、生産人口が伸び続けている数少ない国です。米国は移民の国であること、また、インドは出生数が減少していないことがその要因と言われています。これは経済成長の面では有利な要因だと言えます。

図表1-14 インドと米国の人口動態(年齢3区分)

国連のデータベース  https://population.un.org/wpp/DataQuery/  より作成

 ここまで、人口を「人口力」と捉えて、経済に影響を与える生産年齢人口を中心に、その動態を確認しました。これらをまとめると、以下のようになります。

  • 日本の総人口は2010年(平成22年)までは伸び続けました。これが経済成長の原動力でした。しかしなら、この2010年をピークに減少に転じています。 
  • この人口推移を年齢3区分で見ると、経済活動・生産活動に寄与する15歳~64歳の「生産人口」は1995年(平成7年)から減少に転じ、いまは大きく減少しています。大都市の生産人口の減少は小さいが、地方都市は大きく減少しています。
  • 日本では経済のバブル崩壊が1990年(平成2年)11月に生じています。これと生産人口の減少の時期が重なっており、経済成長という点からは難しい時代に入っていると言えます。 
  • 人口という視点で世界を見ると、10億人以上の人口を抱える中国、インド、そして約3億人の米国、これに続いて日本は第11位となっています。このそれなりに大きな人口が現在の経済を支えていると言えます。
  • 人口は経済成長の原動力の一つで「人口力」とも称されています。日本では、この生産年齢人口の減少(人口力の衰退)と、バブル崩壊による経済の不振がほぼ同時期に生じており、これが現在の経済面での「閉塞感」を生み出している一つの要因だと言えます。

 

この少なくなる人口でどのように社会全体を支えるかが、これからの課題だと言えます。