<大変革の時代>  宮田秀典

 明けましておめでとうございます。

 昨年は、京都大学の山中教授がノーベル賞の栄誉に輝くという明るいニュースで一年を締めくくることができた。ここしばらくの間、あまり明るいニュースに恵まれなかった。しかしながら、山中教授のノーベル賞受賞というビッグ・ニュースで一年が締めくくれたことは何よりであった。

 そのような中で、企業活動にとっては、いまは『大変革の時代』だと感じている。失われた20年と言われるが、1991年のバブル崩壊以降、日本の経済活動は停滞している。1970年代からの日本経済の黄金時代は1991年のバブル崩壊によって終焉し、それ以降、経済活動の停滞が始まった。そして2001年のITバブルの崩壊、08年のリーマンショックがそれにダメ押しをしてしまった。この間に企業経営を取り巻く環境、特にグローバルな環境が大きく変化してしまった。そのような中で、企業規模の大小を問わず、日本企業には大変革が求められており、これが待ったなしの状況になっている。

 正直なところ、日本企業にとって悪い要因は出尽くしたのではないだろうか。もう、このままで良いとは誰も思っていない。また、ここからの脱出策もいろいろと語られており、そこには具体策も沢山ある。何よりも必要なことは、それらを実行に移すことだと思う。そして、何よりもスピード感を持って実行し、大変革を成し遂げることだと思う。

 かつて、大阪府知事であった橋下氏と大阪市長であった平松氏の間を取り持とうとした大阪商工会議所の会頭が書かれた新聞記事を見たことがある。そこにあったのは、両氏ともに大阪を良くしようという気持ちには変わりはない。ただ、その考えている変革のスピード感が全く違った、ということであった。これは、本当に印象的な記事だったと今でも覚えている。

 失われた20年というが、この間に企業に入社した人達の先頭集団は、もう40歳代の半ばになっている。まさに企業の発展成長のみならず、社会を支える中核の世代である。もう10年もすれば、この世代が企業のトップマネジメントとなる。この世代が大変革の主役だと思う。彼らは日本企業の黄金時代を知らない。しかし、これは弱みではない。むしろ、かつての成功体験を知らないこと、また、かつての常識を持たないことは強みなのだと思う。また、強みにしないといけないと思う。大変革のスピード感を担うのは、この世代だと思う。

 彼らが経営の感覚、経営の実務、経営の実学を身につけることを心から応援していきたい。この若い世代の持つスピード感、新たな経営感覚と、かつての良き時代を生き抜いた世代の経験を経営の実務に生かせれば、企業は大変革をなし遂げられると信じている。社会全体がそのようなからくりで回ることを期待している。

 山中教授は、「VisionとWork_Hard」を信条にされていると聞く。含蓄のある言葉だと思う。VisionもWork_Hardも、誰もが心がけるべきことだと思う。これがあれば、大変革が成し遂げられると思う。私自身は「志と執念」という言葉が好きである。何故か、山中教授の信条と相通じるところがあるのではないかと、内心、自画自賛をしている。今年1年、改めて自分自身を叱咤激励して、社会のお役に立っていきたい。