<魚の気持ちの理解なくして魚は釣れない>  中西大和

筆者は企業勤務の最後を中国事業の責任者として、上海に居ながら、中国東北地方から上海、広州まで広く中国を見る機会に恵まれた。また、退職後は秋田県の産業技術センター所長として同県の中小企業の天津を中心とした中国進出を応援してきた。この間、同業・異業の日本メーカー多数の国内/海外のビジネス展開を見ながら頭にあったことをメモにしてみた。なお、筆者の友人にマーケティングが専門で魚釣りが好きなのが居るが、彼の話を聞けば聞くほど、商品作りもマーケティングも販促も、そして魚釣りも、相手の気持ちの理解から始まる点では同じだと思え、以下分かりやすい例として、このアナロジーを使うこととした。

〈日本国内の状況〉

我が国は、戦後の発展によって世界第二の経済国になったものの、バブル以降は経済が停滞していると言われて長い。現下の国内市場は、言わば、お魚はお腹がいっぱいで餌が目の前にあっても、そう簡単には食い付かない。一方で釣人であるメーカーや販売業者はどういう種類の魚を釣りたいのかが分らないまま、釣り方も深く考えないでただ餌を投げ入れている状況に例えられよう。しかし、個別に見てみると、お金のありそうな高齢者は「健康食品」「介護」など安全・安心を優先し、若者はお金も少なく働く場が欲しいと思っているが意外と現状に満足していて、ただ気に入ったものについては思い切ってお金を使ってでも買ってしまう。このように、相手の気持ちになって工夫する余地は国内にも残っている。

〈世界の状況、とくにBRICs〉

次の有力な市場として誰もが考えるのは、13億の人口を持つ中国と、12億の人口のインドを含むBRICsで、10年前は食べたいものが沢山あったがお金が無かった人たちは、今や、豊富な労働力や地下資源の活用などで裕福になり、買いたいものも多様化しそれを買えるようになってきた。そこで、筆者の経験から中国の今を見てみると、家族への安全・安心への関心が高く、価格が高くても品質の良い日本のモノを選好し、特に日本食品の信頼性の評価は高い。同じように、自分の安全を守るためには日本の輸送機械(自動車、鉄道、昇降機等)への指向が強い。更に、BRICsでも中国は高齢化社会への移行が早いので、これからは、医療機器及び薬品、補聴器(16.5%の人が難聴)、介護付き老人ホームが求められていくと感じている。

〈SOLEと一緒に〉

SOLEが提供するサービスの一つに海外事業展開の支援がある。SOLEのスタッフは、海外にネットワークを持っているので、これを活用して支援サービスを行う。SOLEのホームページには海外事業展開の支援について考え方や対象分野/地域などを纏めているので、お時間のある方はご覧になって頂きたい。魚釣りに例えるなら、魚の気持ちをアドバイスし、その魚の気持ちと竿や網などの道具とをマッチさせて、魚の居そうなところを一緒に見つけるお手伝いをしようとするものである。SOLEのスタッフは、ベテランの船頭であるので是非ご相談下さいというのが結論であるが、勿論、国内での魚の釣り方についてもアドバイスさせて頂くことを付け加えたい。